思い通りに伝わるアウトプット術|書評

  • 2022年5月9日
  • 2022年5月9日
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三省堂が改修のため一時閉店する前日に行って急遽購入。安心と信頼の山口真由さんの書籍。ぺらぺらとめくった感じは普通のhowto本なのだが、一般的なものと比べてトピックが少なく、一つのトピックを厚く解説している印象。「割とどこでも聞くよねそれ」っていう内容の薄いものではなく、しっかりと身が詰まっている内容であるように感じた。

響いたとこ切り出し

「できて当たり前だと思わない」

これは最近よく読む話。できて当たり前と思って自分なりの完璧までやってしまって、結果後戻りが多くなる、またPDCAが遅くなるなどのデメリットが現れる。それを回避するため、チャレンジ評価制度を採用する。つまり、チャレンジした時点で80点。アウトプットの質よりも前に、まずアウトプットしたことを評価する。

「バランスをとる」

異なるトピックでよくこの表現が出てきた。まず、話し合いの中で、どういう知識を持った人がどういう立場から発言しているかを知ること、また、同じことを言うのでも、誰が言うのがベストなのかを考えること。そのうえで自分がどういう発言をするのが調和をもたらすのか考えること。

次に、好感と抵抗感を8:2の比率にする。好感を10割にしようとするとあたりさわりのない言っても意味がない言葉になってしまう。かといって奇をてらいすぎても受け入れられない。聞き手からしてちょうどいいバランスは8:2。時に抵抗感のありそうな内容を話すときには、話し方や言葉選びで調整する。

自分の意見と根拠のバランスをとる。緩衝材としておく言葉はコンパクトにしつつ、言いたいことに厚みを持たせる。

論理だけでなく感情にも目を向ける。

知識7割経験3割。知識を自分自身の経験と紐づけ、情報に血が通う。

「言葉遣い以前に気遣いを持つ」

事実を言っただけなのに怒りを買うことがある。そこでお互いに聞く耳を持たなくなってはいけない。伝えよう、わかろうとする気持ちは持ち続けないと。

「書く前の苦しさは書くことによって消える」

まず素材を出し切って、そこから自分の考えを整理する。

感想

この手のhowto本にしては結構頑張って読まなければ理解できないところもあった。弁護士として、コメンテーターとして、様々な経験から形作られた考えだったので、未知のこともあり、読むに足る内容だったということだろう。全体のバランスを考えながら、細部にも気を遣う、ものすごく高度なことをされているなあと感心した。

山口さんの印象として、正義感が強いイメージがあった。思った以上に全体のバランスを考え、自分の発言が与える影響を深く考えて話されているのだなあと感心する一方、結構迎合しているのかなと思った。ただ、それは読み進めていくと否定しており、自分の軸は絶対にブラさないということが書かれていて安心した。

また、全体を通して感じたのは、山口さんの謙虚な姿勢である。一緒に共演する出演者の方から何かを学ぼうという姿勢をどんな時も持ち続けていることがひしひしと伝わってきた。正直、「それは相手の方が悪いと思うよ」という場面に出くわしても、それとは別にその相手から何かを学ぼうとしており、そこまでできるのは本当にすごいんだと思った。やはり、傲慢になって自分の認めた人からしか学ぼうとしないと成長速度は下がる。誰からでも、何かを謙虚に学び取る姿勢は本当にかけがえのないものだと感じた。

加えて、言葉が正確でわかりやすいだけでなく、ずっしりとした重みをもっている。特に好きなのは、

『感情を乗せた多弁よりも、抑制された沈黙の方が「美しく」見えるもの』

という言葉だ。理由はうまく言えないが、響く。

といって山口真由にますます心酔しましたという話。

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